オーギュスト・ロダンの作品と、彼がコレクションした作品が所蔵されている美術館。イギリス式の庭もステキです。
こんにちは、パリナビです。フランスを代表する彫刻家といってすぐに思いつくのは、やはりオーギュスト・ロダンですね。ロダンは19世紀末から20世紀の始めにかけて活躍し、「近代彫刻の父」と呼ばれています。パリの7区、アンヴァリッドのすぐ近くに、ロダンの住宅兼アトリエであった建物があります。それがロダン美術館(Musée Rodin)。パリの美術館の中でも人気の場所であり、いつも沢山の人が訪れています。では早速ロダン美術館を見学してみましょう。
ロダン美術館の歴史
歴史あるビロン館
ロダン美術館の建物は、「ビロン館」と呼ばれます。18世紀にこの建物を所有していた将軍の名前にちなんだものです。その後19世紀に入って、この館はサクレ・クール修道会の所有となります。
20世紀の初頭に、修道会が建物を手放したため、作家のジャン・コクトー、画家のアンリ・マティス、舞踏家のイサドラ・ダンカン、詩人のライナー・マリア・リルケなど、時の芸術家たちがビロン館を借りるようになります。
ロダンはリルケの紹介によってこの館に入り、さっそく地上階(日本では1階)に4つの部屋を借り、アトリエを構えました。
1911年、ビロン館は国の所有となります。他の芸術家たちが立ち退く中、ビロン館を手放したくなかったロダンはこう申し出ました。
「私の全作品、および自分のコレクションした美術品をすべて国に差し上げます。ビロン館を私の美術館として、これら作品が芸術家の育成に役立てれば幸いです。」
紆余曲折のあとようやく議会で可決され、1919年、ついにロダン美術館がオープンしました。しかしロダン自身は、完成を見る前の1917年に亡くなってしまいます。
ビロン館
自然光の射す館内
では館内へ入ってみましょう。ロココ調の建物は、美術館というよりまるで大きなお屋敷に足を踏み入れたような感じです。各展示室は、年代やテーマごとになっていて、ロダン自身の歴史を分かりやすく見ていくことができます。屋根が高く、部屋の装飾も当時の面影を残しています。ガラスケースに入っている作品もあるのですが、多くの作品はそのまま展示してあり、まさに触れるぐらい目の前で鑑賞できるのは感激です。ちなみにオーディオガイドのサービスがあるので、詳しく説明を聞きながら見てまわりたい人はチケット売り場の横で借りましょう。
ヴィクトル・ユゴーのモニュメント
モデルを使った彫刻の他には、著名人をモデルにした像もあります。バルザックやヴィクトル・ユゴー、マーラーにクレマンソーなどなど。表面的ではなく、人物の内側を浮き彫りにするロダンの作品たちは、間近で見るとさらに細部に渡っての迫力が伝わって来ます。
「地獄の門(La Porte de lEnfer)」のような大掛かりな作品には一つの展示室が設けてあります。ダンテの「神曲」をもとにした作品は、ロダンにとっても大仕事でした。試作からそれぞれのパーツの初期段階と細かいパーツが展示されています。あの有名な「考える人(Le Penseur)」も、この「地獄の門」の1パートです。もともとダンテ本人のイメージで作られたのだそうですよ。
さて、ロダンの弟子としてとても有名なのは、映画にもなったカミーユ・クローデルですね。館内にはカミーユ・クローデルの作品が展示してある部屋があります。
代表作の一つ、「分別盛り(L’Âge Mûr)」。悪魔に連れ去られる男とそれに追いすがる若い女の姿は、ロダンと内縁の妻、そしてカミーユ自身の関係を表していて鬼気迫るものがあります。
カミーユ・クローデル「分別盛り」
ロダン美術館では企画展も開催しています。ロダンと他の芸術家を関連付けた企画展も好評です。チケット売り場や売店の入っているチャペルで催されます。
それにしても膨大なコレクション。各部屋はそれほど広くないのですが、ひとつひとつ丁寧に見ていくにはたっぷりと時間を取って行きましょう。
「地獄の門」の部屋
|
|
バルザック像
|
「カレーの市民」
|
|
企画展示もある
|
広大な庭園
庭園から見るビロン館
アンヴァリッドの屋根が見える
ロダン美術館は、その見事な庭園でも知られています。広さ3ヘクタール、広い芝生に並木道。庭園のあちこちにロダンの作品が据えられています。中でも、「地獄の門」や「考える人」、「カレーの市民(Les Bourgeois de Calais)」は特に有名。みな足を止めて見入っています。
それにしても庭園に作品をむき出しで展示するなんて、大胆なアイデアだと思いませんか。実はロダン自身がこのような設置を始めたということなのです。自然の光を浴びて佇む彫刻は、屋内で見るのとはまた違ってとてもダイナミックな感じがします。
庭園だけの入場も可能です(2ユーロ)。噴水の周りにはベンチがあり、休憩したり、のんびりと庭園を眺めたりする人たちの姿があります。角度によっては近くのアンヴァリッドの屋根が金色に光っているのが見えます。ロダンの庭で寛げるなんてとても贅沢な時間ですね。
庭園の中にはバラ園もあります。よく手入れがされているので他のバラ園にもひけを取りません。5月6月あたりがちょうどよい時期です。
カフェも併設
庭園の脇道には、テラス席もあるカフェがあり、見学者の休憩スポットとなっています。カウンターで注文する形式で、軽食やスイーツなど色々あります。暑い日には外にアイスクリームのワゴンが出ていることも。
テラス席は並木道に設置してあるので、木漏れ日の下でお茶休憩、なんてとってもお洒落。ぜひ天気のよい日に訪れたいものです。
ロダン関係の書籍
専門書がずらり
売店もロダングッズが沢山。ロダンの顔が描かれたユーモアのあるTシャツやロゴ入りグッズなど、いかにもお土産っぽいものから、子供用の絵画セットなどのクリエイティブなグッズまで色々あります。中でもロダン関連の書籍はさすがの品揃えです。雑誌「ボザール」のロダン美術館編は、日本語バージョンもありますよ。
庭園の緑や太陽光が差し込む中で見る彫刻は、作品に陰影をつけて、より美しく見えるようです。庭園も合わせて楽しみたいので、ぜひ晴れた日に訪れて下さい。彫刻に特に興味がない人でも、作品の持つその迫力にきっと感動すること請け合いです。
ちなみに、最寄り駅であるメトロ、ヴァレンヌ駅の構内にも、考える人の像があるんですよ。チェックしてみてください。
以上、パリナビでした。