フランス菓子・スイーツ入門

ミルフィーユ、タルト、エクレア・・。知れば知るほど奥が深い、フランスのスイーツをご紹介します。

こんにちは、パリナビです。フランス、パリといえば何を思い浮かべますか?エッフェル塔、セーヌ河、美術館、オペラ座など訪れるところがたくさんありますが、「お菓子屋さん」も忘れてはいけません。そう、パリはスイーツの都でもあり、これを楽しみに旅行する方もいるのではないでしょうか?お菓子屋さんはフランス人にとって、日常生活にあるとても身近な存在。お昼のデザート、おやつ、仕事帰りにケーキを買っていく姿は、よく見かける光景です。子どもから大人まで、男女問わず、みんな大好きなスイーツ。お店にはどんなお菓子が並んでいるのでしょうか?

ケーキ屋はパティスリー

日本ですっかり定着した言葉、パティスリー(pâtisserie)」はフランス語でケーキ屋のこと。パティシエ(pâtissier)はケーキ職人、菓子職人という意味です。ちなみに、ブーランジュリーはパン屋、ブーランジェはパン職人。ショコラトゥリーはチョコレート屋、ショコラティエはチョコレート職人のことです。パティスリー&ブーランジュリーという、ケーキ屋とパン屋を一緒に営業しているお店が一般的です。パティスリーと名乗っていても、パンを販売しているお店もあります。
バスチーユ地区にある「Blé Sucré」。地元の人たちに愛される人気のお店です。

バスチーユ地区にある「Blé Sucré」。地元の人たちに愛される人気のお店です。

今回お菓子を紹介させてもらったブレ・シュクレ(Blé Sucré)は、バスチーユ地区にある人気のお店。オーナーはファブリス・ル・ブルダ氏。パラスホテルのブリストルではスーシェフ・パティシエとして活躍後、念願の自身のお店をオープンしました。お店のひさしには、左にパティシエ(pâtissier)、右にはブーランジェ(Boulanger)と書かれています。
パリのグルメ通りのひとつ、ムフタール通り近くにある「Carl Marletti」。

パリのグルメ通りのひとつ、ムフタール通り近くにある「Carl Marletti」。


もうひとつのお店はカール・マルレッティ(Carl Marletti)。質の高い食材がそろうムフタール市場近くに位置するパティスリーです。地元の人、また食いしん坊たちが遠くからわざわざ足を運びます。オーナーは、ホテル・インターコンチネンタル・ル・グランで10年以上に渡り活躍したカール・マルレッティ氏。親日家でもあり、日本で講習会も行っています。こちらは大きくパティシエ、と書かれています。

伝統的なケーキ

ブレ・シュクレのショーケース。まるで宝石が並んでいるかのよう。

ブレ・シュクレのショーケース。まるで宝石が並んでいるかのよう。

ショーケースにずらりと並ぶケーキには、クラシックといわれる歴史のある伝統的なタイプ、パティシエが創作したモダンなタイプがあります。

シュー生地を使ったお菓子


フランス語の シュー(choux)とは日本語で「キャベツ」の意味。形がキャベツに似ていることからつけられたといわれています。典型的な日本のシュークリームは、皮が薄いのが特徴ですが、フランスのシューはしっかり焼き込み「生地のおいしさを味わう」もの。そのシュー生地をつかったお菓子はたくさんあります。
カール・マルレッティのルリジューズは4種類。

カール・マルレッティのルリジューズは4種類。

ルリジューズ:大小のシュー生地にクリームを詰めて重ねたもの。その形が修道女(ルリジューズ)に似ていることからつけられました。
リング形をしたシューは、パリ・ブレスト。(ブレ・シュクレ)

リング形をしたシューは、パリ・ブレスト。(ブレ・シュクレ)

パリ・ブレスト:パリとブルターニュ地方のブレスト間を往復で走る自転車レースの際に考案された、というのが一説。車輪の形に似せたリング形のシューに、プラリネクリームをはさんだのが始まりといわれています。
淡い紫色はヴァイオレット(すみれ)風味。

淡い紫色はヴァイオレット(すみれ)風味。

サン・ト・ノレ:19世紀にパリのサン・トノレ通りのケーキ屋で誕生。飴がけしたシュー生地とクリームの組み合わせ。最近ではショコラ、キャラメル、ピスタチオなど、様々なフレーバーを見かけるようになりました。カール・マルレッティは、ヴァイオレット風味。隣の花屋さん「リリー・ヴァレリー(Lily Valley)」と同じ名前です。
ぴかぴかのグラサージュは、ブレ・シュクレのエクレア。

ぴかぴかのグラサージュは、ブレ・シュクレのエクレア。

エクレア
:稲妻という意味。フランス語では「エクレール」と発音します。フランス人が日常的に食べる代表的なお菓子のひとつ。
「フィガロ」紙が開催した「パリで一番おいしいタルト・オ・シトロン」に選ばれたカール・マルレッティ。

「フィガロ」紙が開催した「パリで一番おいしいタルト・オ・シトロン」に選ばれたカール・マルレッティ。

タルト・オ・シトロン
:レモンタルト。タルト生地に、とろりと甘酸っぱいレモンクリーム。お店によっては、メレンゲをのせたものもあります。最近では、ライムを加えて爽やかさをプラスしたタルトも登場しています。写真はカール・マルレッティ。フランスの新聞、フィガロスコープが2009年に開催した「パリで一番おいしいタルト・オ・シトロンランキング」で1位を獲得しました。
シンプルなバニラ風味は定番の味。

シンプルなバニラ風味は定番の味。

香ばしいプラリネも人気です。

香ばしいプラリネも人気です。


ミルフイユ:ミルフィーユのこと。ミル(1000)、フイユ(葉)で千枚の葉という意味。フィユタージュ(パイ生地)にクリームをサンド。フィユタージュの新鮮さが、おいしさの鍵を握っています。バニラ、プラリネ、ショコラなど種類も豊富です。ミルフィーユと発音すると全く通じません。フォイユ、またはフイユに近い発音です。日本人にとっては非常に難しい言葉ですが、とてもおいしいケーキ。めげずに注文してください!カール・マルレッティのミルフィーユは、ざくざくとしたパイ生地が人気。このパイ生地の高さが食欲をそそります。 
たっぷりと絞ったマロンクリーム。ブレ・シュクレは四角いモンブラン。

たっぷりと絞ったマロンクリーム。ブレ・シュクレは四角いモンブラン。

モンブラン
:栗好きにはたまらないケーキ。丸い形が定番ですが、ブレ・シュクレは四角のフォルム。何だかおしゃれに見えますね。 
旬のフルーツのおいしさを味わうタルト。

旬のフルーツのおいしさを味わうタルト。

タルト
:フランスの家庭でよく作られるケーキ。詰めるクリームは、主にアーモンドクリームやカスタードクリーム。旬のフルーツを使ったタルトは、シンプルなゆえに、お店の個性が出るお菓子でもあります。
フランス人の子どもの頃の味の代表、フラン。

フランス人の子どもの頃の味の代表、フラン。

フラン
:パン屋などで売られる代表的なお菓子のひとつ。プリンに似ていて、もう少し固めて味を濃くしたようなお菓子です。卵と牛乳、少量加えた小麦粉を加えた柔らかい生地(アパレイユ)でできています。

モダンな創作ケーキ

 
左のチョコレートケーキがスペシャリテのひとつ「サンシエ」。

左のチョコレートケーキがスペシャリテのひとつ「サンシエ」。

パティシエによる創作ケーキ シェフのアイディアが光るモダンなケーキ。お店がある通りの名前がつけられた「サンシエ(Centier)」はカール・マルレッティのスペシャリテのひとつです。さくさくとしたプラリネ、パチパチとはじけるキャンディーのかけらをくわえたものが土台。その上に濃厚なビターチョコレートのクリームを、クネルという形にしてのせたケーキ。様々な食感が口の中で一体となり、楽しさとチョコレートのおいしさが味わえる人気の一品です。 
中央に光るケーキ「トゥルソー」。

中央に光るケーキ「トゥルソー」。

ブレ・シュクレの「トゥルソー(Trousseau)」はお店の目の前にある公園の名前。フォークを入れるのがもったいないくらいの美しさ。ミルクチョコレートとフランボワーズの酸味。すーっと溶けるようなムースは、街のケーキ屋という枠を超えた星付きホテルなみのレベルです。 

焼き菓子

ずらりと並ぶ焼き菓子。

ずらりと並ぶ焼き菓子。

日持ちのするパウンドケーキ、サブレ、フィナンシエ、マドレーヌ、パルミエなど。シンプルなフランス菓子は、フランス、日本でも人気。小麦、バターなど、質のよい材料を使ってパティシエが作ったお菓子は、また格別な味わいです。最近はケーキだけではなく、こういった伝統的な焼き菓子も見直されつつあります。今後のパティスリーの動きに注目です。 
ショーケースの上には焼きっぱなしのタルト。ついつい買ってしまいます。

ショーケースの上には焼きっぱなしのタルト。ついつい買ってしまいます。

巨大!チョコチップクッキーも購入者多し。

巨大!チョコチップクッキーも購入者多し。

パウンドケーキは手みやげにも最適。

パウンドケーキは手みやげにも最適。

パティシエのつくるサブレは、またひと味違います。

パティシエのつくるサブレは、またひと味違います。

小麦のおいしさをかみしめるサブレ。

小麦のおいしさをかみしめるサブレ。

マカロンも人気のお菓子。

マカロンも人気のお菓子。

コンフィズリー

壁がけのディスプレイ。インテリアの参考にもなりますね。

壁がけのディスプレイ。インテリアの参考にもなりますね。

辞書をひくと「砂糖菓子、または菓子店、砂糖菓子製造・販売」と書かれています。これはキャンディー、キャラメル、ギモーヴ、ヌガー、パート・ド・フリュイのこと。キャラメルといえば、日本では「アンリ・ルルー」がそのおいしさで知られています。 

ギモーヴ:マシュマロのこと。日本でもすっかりおなじみの言葉となりました。お菓子屋で見かけるギモーヴは、日本よりも大きめで四角の形。ふわっふわで、しゅわっととろけるような口溶けがやみつきになります。 
大きな四角いマシュマロ、ギモーヴ。

大きな四角いマシュマロ、ギモーヴ。

ヌガー
:泡立てた卵白に、はちみつ入りのシロップや、砂糖を煮詰めたもの、アーモンドやピスタチオなどのナッツ類を加えたもの。南仏や、フランス南東部の都市、モンテリマール産が有名です。 

パート・ド・フリュイ:天然の果汁を固めたゼリー。お店によってグラニュー糖をまぶしたりします。最近ではこのお菓子が見直されてきています。とくにジャック・ジュナンのパート・ド・フリュイは口の中で、フルーツのおいしさがじゅわっと広がります。 
お菓子感覚の板チョコレート。種類も豊富で迷ってしまいますね。

お菓子感覚の板チョコレート。種類も豊富で迷ってしまいますね。

タブレット
: コンフィズリーの下の段に並べられたタブレット。板チョコレートのことです。ブラック、ミルク、ホワイトの3種類があり、ナッツをキャラメリゼしたものや、クレープを乾燥させて砕いた「クレープ・ダンテル」入りなど、種類が豊富。おやつにぼりぼり、と止まらなくなってしまいます。 

コンフィチュール:「ジャム」のこと。これも日本にしたフランス語のお菓子用語。自家製のジャムを置くお店も多く見られます。

ヴィエノワズリー

パン生地にバターや卵をたっぷり使って作るクロワッサンやブリオッシュなどのこと。ウィーンのことをフランス語では「ヴィエンヌ(Vienne)」といいますが、そのウィーンから伝わってきたので「ヴィエノワズリー(Viennoiserie)」といいます。クロワッサン、パン・オ・ショコラは、朝、昼、おやつにと、あっという間に売れていきます。焼きたてのさくさくが一番の食べごろです。 

ショソン・オ・ポム:ショソンとは室内履きのスリッパのこと。パイ生地の中には、とろりとしたりんごのピュレが詰まっています。
口にした人全員が「おいしい!」という、ブレ・シュクレのクロワッサン。

口にした人全員が「おいしい!」という、ブレ・シュクレのクロワッサン。

スリッパのような形をしたお菓子「ショソン・オ・ポム」。

スリッパのような形をしたお菓子「ショソン・オ・ポム」。

パン


パンも販売しているお店が多いのも、フランスのパティスリーの特徴。バゲットは半分からでも購入可能です。よく焼けたものがほしい場合は「ビヤン・キュイ(bien cuit)」といえば、ちゃんと選んで渡してくれます。自分好みのバゲットを販売員に言うのも、フランスならではの光景です。バゲット・トラディションは、国が品質を保証した小麦を使ったり、生地の発酵時間が長いもの。他にはフィセルという、バゲットよりももっと細いものもあります。パン・ド・カンパーニュ、コンプレ(全粒粉)、セーグル(ライ麦)、 サンドイッチなどの軽食向きのパンもあります。
朝、昼、夕方。バゲットはフランス人の主食です。

朝、昼、夕方。バゲットはフランス人の主食です。

お昼には飛ぶように売れていく、具をサンドしたパン。

お昼には飛ぶように売れていく、具をサンドしたパン。

パティスリーで楽しく時間を過ごすために

紹介したお菓子たちはほんの一部。お店や地方によって、様々なお菓子が発見できます。名前が分からなくても、「これください。サ・シル・ヴ・プレ(Ca,sil vous plat)」と笑顔でいえば大丈夫です。どれもおいしそうで、選ぶのに時間がかかりそうなときは、他のお客さんを優先するなど、ちょっとした心配りも忘れずに。フランス人の多くは、自分の好みがはっきりしているので、お店の方と話をしながら「パパッ」と決めます。日本の方は、初めて見るお菓子だったり、言葉の壁などがあり、決めるまでに時間がかかってしまいがちですが、これは仕方のないこと。ナビ隊員もそうなのです。お店の方の許可をとってから写真をとるなど、店員、他のお客さん、そして自分たちが気持ちよく時間を過ごせるよう、マナーを守って買い物を楽しんでくださいね。

おいしいお菓子を味わうために、ケーキはその日のうちに食べる。「おいしそう」という自分の直感を信じる。そして胃腸の準備を万全にしてくださいね!以上、パリナビでした。

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2012-03-15

ページTOPへ▲

その他の記事を見る