ヨーロッパ文化遺産の日・マニュファクチュール・デ・ゴブランに行ってきました

フランスが誇る伝統技術、ゴブラン織りの世界へ!

こんにちは、パリナビです。年に一度、普段は見ることのできない場所が一般公開される日があります。それがヨーロッパ文化遺産の日。特別公開でさえ貴重な機会なのに、無料で見学できるとあって、沢山の人がお目当ての場所を訪れます。今回ナビが見学してきたのはマニュファクチュール・デ・ゴブラン(Manufacture des Goblins)、日本でもよく知られたゴブラン織りの工場です。その絵画のようなタペストリーや絨毯にはどんなものがあるのでしょう。そしてどんな場所で作られているのでしょう。それでは早速ゴブラン見学へ出かけましょう!
Manufacture des Goblins

Manufacture des Goblins

染色から織物へ

メトロ7号線ゴブラン駅目の前

メトロ7号線ゴブラン駅目の前

ゴブランという名前の由来は、15世紀にランスからやって来たジョアン・ゴブランという染色職人がここにアトリエを構えたことから来たものです。現在メトロ7号線のゴブラン駅があるこの辺りは、以前はビエーヴル川という、染色に適した水質の川が流れていました。ゴブラン家は成功をおさめ、さらにフランドル出身の二人の織物職人がその織物の技法を伝えたことによって、ゴブラン織りが完成していったのでした。
17世紀には宰相コルベールの政策により、ゴブラン製作所は王室のタペストリーから家具調度品まで全ての内装を手掛けるようになります。ルイ14世の御用達画家だったシャルル・ルブランがそのデザインを監督し、巨大なタピスリーや絨毯が制作され、宮殿や城などのインテリアを彩りました。
19世紀、ナポレオンの時代になってもゴブラン織りは重宝され、オペラ・ガルニエ、エリゼ宮、国立図書館などの内装を飾っていきました。
現在は30人の職人を抱え、15基の機織り機が稼働しています。そして年間6枚から7枚のタピスリーを製造しています。

ギャラリー・デ・ゴブラン

「春の賛歌」1933-36年

「春の賛歌」1933-36年

壁や床いっぱいに広がるタペストリー

壁や床いっぱいに広がるタペストリー

ゴブランでは企画展示が行われている時にのみ開館していますが、今回はちょうど20世紀初等から現代の織物を中心にエクスポが開催されていました。
展示室に入るとその巨大なタピスリーに圧倒されます。そしてその一枚一枚の精密な仕事ぶりもため息ものです。ゴブラン織りは縦糸と横糸を順番に規則正しく織っていく技法ですが、そのタピスリーの絵の中に質感、陰影を出す技術は素晴らしいものです。まるで一枚の絵画を見るような感覚でしょうか。色彩も豊富で、原色を主にしたカラフルで鮮やかなもの、風景画を元にした微妙な配色のものなど、非常にバリエーションに富んでいます。まずは少し離れて鑑賞してからその全体像に圧巻され、次に間近に寄ってみると、少しずつ色を変えて立体的な陰影を作り出すこまかい仕事にまた感心する、といった具合です。
ゴブラン織りはウールや絹を用いたものがほとんど。織目がきっちりと詰まっているのが特徴です。そのため、摩耗が少なく、ソファなど家具の生地としても適しています。
南国の情景が活き活きと描かれています

南国の情景が活き活きと描かれています

「四季・夏」1926年。ブルーと花の色の対比が鮮やかです

「四季・夏」1926年。ブルーと花の色の対比が鮮やかです

ソファにも適した丈夫な織物

ソファにも適した丈夫な織物

絵画のようなディテール。細かい仕事です 絵画のようなディテール。細かい仕事です

絵画のようなディテール。細かい仕事です

時代の移り変わりによって織物のデザインも変化していきます。古くは宗教画やフランスの風景画から、エキゾチックな異国情緒をモチーフにしたものへと移り変わり、さらに20世紀に入るとジョアン・ミロやル・コルビュジエのような前衛的なデザインの織物も登場します。
ジョアン・ミロ

ジョアン・ミロ

ル・コルビュジエ

ル・コルビュジエ

ピカソ

ピカソ

材質もモチーフも斬新なコンテンポラリーアートのようなタペストリー

材質もモチーフも斬新なコンテンポラリーアートのようなタペストリー

アトリエ

中庭に佇むアトリエ

中庭に佇むアトリエ

ずらりと並んだ機織り機

ずらりと並んだ機織り機

ギャラリーを背にして中庭へ出ると、そこは17世紀の雰囲気がそのまま残っています。中庭を通ると、黄色い壁の平屋建ての建物が目に入ります。ここは二つあるアトリエのうちの一つ。この場所からゴブラン織りは生まれるのです。今回は特別に中の様子が見学できます。みんな興味津々で機織り機に目を凝らします。

長い廊下沿いにずらっと垂直に並んだ機織り機。第一印象は、大きい!のひと言です。縦糸はウールのみを使用。織機の上部にロール型になったものが下でピンと張られています。この織機の後ろに職人が座り、この縦糸に、様々な色の横糸をくぐらせていくというわけです。フルサイズのデザイン画は職人の後ろに置かれてあるため、職人は自分の横に備え付けてある鏡にそのデザイン画を映して織っていきます。
特に線や形、配置などの重要な部分は透明な紙にデザイン画を写し取り、それをインクで縦糸に描きつけていきます。それが工程の上でも目印になるということですね。それからようやく織り始めることができるのです。
鏡越しに横糸が沢山ぶら下がっているのが見えます。普段この鏡は職人の前にあります

鏡越しに横糸が沢山ぶら下がっているのが見えます。普段この鏡は職人の前にあります


横糸はウール、絹、麻などを用いて、木製の縄跳びの持ち手のようなピンに絡みつけてあります。縦糸に通しては先の細くなったピンの先端で叩くようにして目を揃えます。横糸の色の数だけピンが織りかけの生地にじゃらじゃらとぶら下がっているのですが、よく間違えないなと思うほどの膨大な数。考えただけでも気の遠くなるような作業ですね。
各タピストリーにはゴブランを表す「G」のモノグラムが織り込まれます。
道具や織り糸の展示も

道具や織り糸の展示も

仕事中の様子が写真で分かります

仕事中の様子が写真で分かります

そのほかの見どころ

ゴブランの敷地内には、シャペルもあります。これは1723年にゴブランの職人たちのために建てられたもの。中には小さな天使の彫刻や、サン・ルイの絵画などが見られます。
また、染色のアトリエも併設されています。そう言えばジョアン・ゴブランはもともと染色職人だったのです。現在でもタピスリー制作、また修理の際にはその時に必要な色を染色する作業が行われています。
シャペルも特別展示中

シャペルも特別展示中

染色のアトリエ

染色のアトリエ

ラボラトリーといった感じです

ラボラトリーといった感じです

特別公開のこの日には、子供のための織物教室や、職人による修復作業の説明なども行われていました。
子どもたちも織り物に挑戦

子どもたちも織り物に挑戦

修復作業の説明中

修復作業の説明中


ギャラリー・デ・ゴブランは、特別展示のある期間は11時から18時まで開館しています(入館は17時30分まで。月曜休)。入館料は一般8ユーロです(ガイド付きの場合は12ユーロ)。
もしアトリエを見学したい場合は前もっての予約が必要です。見学はガイド付きのみです。個人見学は水曜日の15時。団体見学では火、木曜の13時30分と15時、水曜日の13時30分。見学時間は1時間半です。
フランスの伝統技術、ゴブラン織りはまさに芸術の域。皆さんも機会があったら足を運んでみてください。
以上、パリナビでした。






上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2018-09-26

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