魅惑と幻想の世界・ミュシャ展

アール・ヌーヴォーの旗手、ミュシャの作品とその生涯を徹底解剖!

リュクサンブール美術館にて開催中

リュクサンブール美術館にて開催中

こんにちは、パリナビです。日本でも人気の高い画家、アルフォンス・ミュシャ。アール・ヌーヴォーを代表するイラストレーター、デザイナーとして19世紀末から20世紀初頭に活躍したアーティストです。その緻密で甘美な世界はファンが多く、皆さんも必ずその名前は聞いたことがあると思います。
そのミュシャの展覧会が、現在リュクサンブール美術館で開催中。意外ですがパリでこのような大々的な特別展が開かれるのはおよそ40年ぶり。豊富で貴重な貯蔵品を集めた今回の展覧会はパリでも大成功を収めています。というわけで、今回はそのミュシャ展をレポートしてみたいと思います。では一緒に魅惑のアール・ヌーヴォーの世界へ出かけましょう!

イラストレーターとしての出発

「ジスモンダ」のポスターを背にしたミュシャ

「ジスモンダ」のポスターを背にしたミュシャ

アルフォンス・ミュシャ(Alphonse Mucha)は1860年に当時のオーストリア帝国、現在のチェコ共和国に生まれました。ウィーン、ミュンヘンなどで絵を学んだ後、パリにやって来たミュシャはさらに美術学校へ通います。ミュシャは挿絵の画家などをして生計を立てていました。有名なものの一つが、「白い象の伝説」。この中に描かれている人物像は、交流の深かったあのゴーギャンをモデルにしているんですよ。
「白い象の伝説」挿絵

「白い象の伝説」挿絵

挿絵のためにポーズをとるゴーギャン

挿絵のためにポーズをとるゴーギャン

ミュシャが注目を浴びたのは1895年、当時の人気女優だったサラ・ベルナール主演の「ジスモンダ」の舞台公演のポスターを手掛けたことから始まります。偶然のきっかけでミュシャが作ったこのポスターがパリ中で評判となり、またたく間に彼は人気イラストレーターになります。これはミュシャを気に入り、ポスターの専属デザイナーとして契約したサラ・ベルナールの影響によるところも非常に大きいです。エクスポではそんな彼の手掛けたサラ・ベルナールの肖像が並びます。芝居のポスターというより、すでに絵画として成り立っている素晴らしい作品ばかりです。
サラ・ベルナール主演の芝居のポスター。これによりミュシャは一躍有名になります サラ・ベルナール主演の芝居のポスター。これによりミュシャは一躍有名になります サラ・ベルナール主演の芝居のポスター。これによりミュシャは一躍有名になります

サラ・ベルナール主演の芝居のポスター。これによりミュシャは一躍有名になります

売れっ子デザイナーとして

「黄道十二宮」

「黄道十二宮」

ビスケットや香水のパッケージ

ビスケットや香水のパッケージ

大胆な構図と、くっきりとした線で描かれる曲線的で艶やかな人物像、柔らかい色使いに繊細なディテール。ミュシャの絵を表すとこんな感じでしょうか。アール・ヌーヴォー華やかなこの時代のパリでは、そんなミュシャのスタイルが爆発的に支持されました。ポスターの他、シャンパン、香水、たばこにビスケットの箱まで、様々な商品に彼のイラストが登場します。自分の個性を前面に打ち出しながら、その商品の格を上げるようなイメージをしっかりと植えつけるデザイン力には脱帽。チャーミングでありながら高級感が漂うと言うのでしょうか。こんなデザインのパッケージがあれば思わず買ってしまいそうと思うのはナビだけではないはずですよ!
シャンパンやたばこの広告。誰もが目を惹きつけられるデザインです シャンパンやたばこの広告。誰もが目を惹きつけられるデザインです

シャンパンやたばこの広告。誰もが目を惹きつけられるデザインです

装飾画も沢山手掛けています。有名な「四季」も展示。それぞれの季節の色使い、女性たちの仕草や表情がとても美しいシリーズです。ミュシャの描く肉感的で魅力的な表情の女性像も、人気の理由のひとつでしょう。「黄道十二宮」はミュシャの作品でも人気のひとつ。十二星座に取り囲まれた天使の、凛としていながらも優しい横顔が印象的です。
「春」

「春」

「夏」

「夏」

「秋」

「秋」

「冬」

「冬」

パリ万博のポスター。ミュシャはボスニア‐ヘルツェゴビナのパヴィリオンの内装を担当

パリ万博のポスター。ミュシャはボスニア‐ヘルツェゴビナのパヴィリオンの内装を担当

売れっ子イラストレーターとなったミュシャは1900年に開かれた万国博覧会のポスターも手掛けています。いわゆるベル・エポックを象徴するものとして、ミュシャのひとつの頂点ではないでしょうか。さらに装飾品のデザインでもその才能を発揮し、宝石商ジョルジュ・フーケのデザイナーとして、ネックレス、イヤリング、指輪などのデザイン画を担当。さらにブティックの外装や内装だけでなくその家具など一切の装飾を任されました。まさに、アール・ヌーヴォーの第一人者となったわけです。
古代ギリシャの恋人たち。下絵でこの完成度

古代ギリシャの恋人たち。下絵でこの完成度

アクセサリーのデザイン画

アクセサリーのデザイン画

下絵を元に作られたアクセサリー

下絵を元に作られたアクセサリー

祖国への思い

「百合の中の聖母」少女が身につけているのはスラヴ風の衣装

「百合の中の聖母」少女が身につけているのはスラヴ風の衣装

「スラヴ抒情詩」のプロジェクション

「スラヴ抒情詩」のプロジェクション

大成功の陰で、ミュシャは祖国を忘れることはありませんでした。1910年に帰国したミュシャは、同じチェコ出身のスメタナによる「わが祖国」に着想を得たと言われる一大仕事に取り掛かります。それが20点の絵画からなる「スラヴ抒情詩」です。スラヴ民族の神話や歴史に題材を取ったこの作品群は20年近くをかけて制作されました。この連作は大型スクリーンでのプロジェクションによって見ることができます。ミュシャは絵画によって人々の心に連帯と平和をもたらすことができるという信念に基づき、祖国のために活動を続けます。1918年にチェコスロヴァキア共和国が誕生すると、国のために無償にて切手や紙幣などのデザインも手掛けています。この頃の作品はパリ時代のポスターなどに見られる表面的な華やかさが影を潜め、より人間的な心の表現が目立ちます。チェコ時代のミュシャの作品はイラストではなく絵画と呼ぶ方が相当するでしょう。
祖国のために力を尽くすミュシャにも時代の影が忍び寄ります。1939年、ナチスの台頭によりチェコスロヴァキアは解体され、ミュシャ自身は反動的姿勢を理由に逮捕されます。釈放されたものの肺を患ったミュシャは、79歳の誕生日を迎える前に亡くなりました。
「母と子」

「母と子」

聖ヴィート大聖堂のステンドグラス

聖ヴィート大聖堂のステンドグラス

「希望の光」

「希望の光」


人気イラストレーターであり売れっ子デザイナーだったミュシャは、その華やかな面ばかりが強調されますが、同時に自分の哲学を持ったアーティストであり、祖国を愛する一人の人間として、絵画を人々のために役立てる努力を惜しみませんでした。今回の特別展は、そんなミュシャの魅力をその人生と一緒に辿ることができるという意味で非常に有意義なものでした!
ミュシャ展は2019年1月27日まで開催中。開館時間は月曜から日曜までの10:30から19:30。11月12日から12月17日の間は月曜日と金曜日は22:00閉館です。(12月24日、31日は18:00閉館。12月25日は閉館)
どうぞこの機会にミュシャの世界にたっぷりと浸って下さい。
以上、パリナビでした。




 

上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2018-11-14

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