サン・ジェルマン・デ・プレ地区の風景には欠かせない、とんがり屋根の教会。パリ最古の教会の一つです!
こんにちは、パリナビです。サン・ジェルマン大通りに高級ブティックが並ぶ華やかな界隈で観光エリアとしても人気のサン・ジェルマン・デ・プレ。今回ご案内するのは、そのシンボル的存在として愛されている、サン・ジェルマン・デ・プレ教会(léglise Saint-Germain-des-Prés)です。パリで一番古い教会の一つでもあり、パリの歴史をずっと見守ってきた貴重な建築物です。建て直しや改築を何度も行われてきたため、建築様式が混在しているのも興味深いところ。長い時間を経て今でも様々な活動が行われる教会です。では行ってみましょう。
パリ最古の教会
古い歴史を持つ教会
鐘楼は1000年前のもの
サン・ジェルマン・デ・プレ教会と言って必ず付いてくる形容詞は、「パリ最古の」教会であるということ。その歴史は6世紀にまでさかのぼります。メロヴィング朝の王であったキルデベルト一世が、聖遺物や王の墓を収めるために建築した教会が原型です。その後558年にキルデベルト一世が亡くなり、自ら建てたこの教会に葬られました。その当時は今の名前ではなく、聖ヴァンサン教会という名前でしたが、パリ司教であった聖ジェルマンが576年に亡くなり、その後サン・ジェルマン・デ・プレ教会と呼ばれるようになりました。
9世紀にはバイキングの侵略にあい、さらに火事で教会は壊滅してしまいます。
1000年に入って、当時のフランス王ロベール二世の命により、修道院長のモラールが再建築にあたりました。教会のシンボルでもある鐘楼もこのときに作られたものです。もとは3つあったのですが、現在は一つしか残っていません。この鐘楼は1014年に建てられたので、もう1000年の歴史があるということですね。
建築様式は鐘楼に代表されるロマネスク様式です。パリではなかなかお目にかかれないタイプの建築様式なのだそうですよ。
中を見学してみましょう
慰めの聖母像
静かなたたずまい
現在は鐘楼と教会のみですが、革命前の教会の図を見ると、昔は敷地の広い修道院だったのが分かります。中に入ってみると、明かりはほんのりと暗めです。入ってすぐに信者の人達による案内図があります。こういうところは観光スポットというより地元の教会らしいですね。他にもこれからご紹介する見学ポイントも説明してあるので、訪れる際にはまずこちらをチェックするといいと思います。
さて、正面に向かって右手から回っていきましょう。扉のすぐ横奥には、これを目当てに来る人もいるという、慰めの聖母像(Notre-Dame-de-Consolation)が。14世紀の大理石の作品です。
そのまま進むと、サン・モール(Saint Maur)の小礼拝堂があり、J・レスツゥによって描かれた「聖モールの栄光」があります。
そのほぼ反対側に、浅い浮彫の彫刻があります。これは最初のケベック州の司教となったモンゴメリー・ラバルの奉献の図で、1980年の作品です。
聖母像とサン・ジェルマンの木像
さて、祭壇の後ろに回ってみましょう。ここの部分は周歩廊になっていて幾つものシャペルに分かれています。天井の交差リブは12世紀のものですが、20世紀半ばに修復されました。
ここには20世紀末に教会の近くで発見された聖母子像があります。3つの石の断片により作られたこの像は、おそらく昔、聖母の礼拝堂に置かれるはずが何かしらの理由により壁の土台の一部になっていたとみられています。13世紀中頃ののパリの彫刻ですが、聖母の顔が少し幼子の方へ傾いた様子などきめ細やかな描写が素晴らしいです。
木製の聖ジェルマン像もこの後ろの周歩廊にあるサン・ジェルマン小礼拝堂の中に収められています。この礼拝堂自体が保存状態がよく、初期の様式である放射線状スタイルが残っています。木製の聖ジェルマン像は1961年にM.ピュリツェルによって製作されました。
フランシスコ・ザビエルのシャペル
二つの彫刻が収められています。
では今度は反対側の通路を見ていきましょう。日本でもおなじみのフランシスコ・ザビエル(Saint François Xavier)のシャペルには二つの大きな彫刻が目に入ります。
まずはザビエルの像、これは17世紀のクストゥの作です。凛としたたたずまいですね。
その横にある彫刻は、ポーランド王のジャン・カシミール(1609-1672)です。1668年に王位を退いた後にフランスに隠居し、サン・ジェルマン・デ・プレの修道院長を務めました。彫刻はG.マルシー、浮彫りはJ.ティボーによるものです。正面から見ると横を向いているのですが、少し斜めから見ると表情がよく伝わってきます。
ちなみにこのシャペルのステンドグラスは17世紀のもの。
ポーランド王カシミールの像
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フランシスコ・ザビエルの像
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壁画の数々とオルガン
コンサートも開かれます。
壁にはたくさんの絵画が描かれていますが、中でも有名なのは19世紀の画家フランドラン(H.Flandrin)による「エルサレム入城(l’Entrée à Jérusalem)」と「十字架を担ぐイエス(La Montée au Calvaire)」です。ちょうど教会の中ほどにあります。
教会に入ってすぐ上にあるオルガンは19世紀初頭のもの。サン・ジェルマン・デ・プレ教会はコンサートがしばしば開かれることでも有名です。有料のものから無料のものまで、コンサート情報は教会のウェブサイトで見ることができます。機会があれば教会音楽に触れるのもいいかも知れませんね。
フランドラン作「十字架を担ぐイエス」
色んな歴史の変遷を経てきたサン・ジェルマン・デ・プレ教会。現在も洗礼から結婚式、お葬式など、人生の節目や暮らしに密着し、地元の人たちに愛される教会として大事にされています。
今や高級ブティックや老舗カフェが並ぶ一等地のサン・ジェルマン・デ・プレですが、この教会だけはずっと変わらずに人々の暮らしを見守っていてほしいものですね。
以上、パリナビでした。