15世紀に創設されたオスピス(施療院)。ブルゴーニュ地方独特のモザイク屋根は、一見の価値がある美しさです。
こんにちは、パリナビです。フランス中東部のブルゴーニュ地方。ディジョンに引き続き、今度はブルゴーニュ地方の中でもイチオシの観光スポットをご紹介しようと思います。それはオスピス・ド・ボーヌ(Hospice de Beaune)。オスピスとは看護のための収容施設、施療院のことを指します。15世紀に建てられたこの施療院は、20世紀まで実際に患者を収容していました。現在は美術館として公開されています。ブルゴーニュ独特の建築が美しいオスピス、どんなところか早速ご案内しましょう。
別名「オテル・デュ―(神の館)」
ディジョンから約30分
オスピス・ド・ボーヌはその名の通りボーヌという町にあります。アクセスも便利で、ディジョンから電車で約30分。ボーヌとディジョン間は1時間に2本ほどは電車がありますので、ディジョンから軽く足を伸ばすのにも向いています。ローカルな電車の車窓からはワインの地方らしくブドウ畑が広がる景色が続き、フランスらしいのどかな田園風景を楽しめます。
ボーヌ駅からのアクセス
ボーヌは街自体がかなり小規模であり、駅から中心部へは徒歩で20分もあれば着いてしまいます。また、オスピス以外にもワイン博物館などの観光スポットがありますので、時間のある人はボーヌ観光をゆっくり楽しんでください。可愛らしい街並みですよ。
ボーヌ駅
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映画「大進撃」のロケ地にオスピスが使われたことを表す壁画
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神の館
オスピスのあるアール広場
ところでみなさんは、「オテル・デュー(神の館)」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。パリのノートルダム大聖堂の脇にも、このオテル・デューがありますが、これはオスピス、施療院の別の呼び方です。なぜ神という言葉がついているかというと、診療行為や治療行為が昔は教会と直接結びついていたからです。現在のような科学的な医療行為の行われる前は、病人を介護するのは教会に従事する人たちの仕事でした。修道女たちがオスピスで病人たちのお世話をするというのは、かなり最近まで定番の仕事だったわけです。ブルゴーニュ公の大法官であったニコラ・ロランがこのオスピスを創立したのは1443年。ゴシック調のファサードにはその1443という数字が刻まれています。
オスピス・ド・ボーヌは、街のほぼ中心にあります。アール広場(Place de la Halle)には観光案内所があり、お土産の店やマルシェで賑わっています。オスピスの入り口はその広場の脇にあります。人気のスポットですので行列は多少覚悟をしておいた方がいいでしょう。時間に余裕をもって行ってください。
モザイク模様の屋根瓦
オスピスの中庭
ではいよいよ入館。入館料にはオーディオガイドも含まれています。日本語もあるのでぜひ使ってみて下さい。従来のガイドとは違って、芝居形式に当時の様子が再現されるなかなかユニークなガイドですよ。
通路を経て中庭へ出ます。中庭を取り囲む建物の屋根に注目して下さい。ここがまず一番の見どころである、カラフルなモザイクの屋根です。うわぐすりを用いて色付けされた瓦屋根は、芸術品とでもいうべき素晴らしい眺め。ブルゴーニュにはこういったモザイク屋根の建物が幾つもありますが、このオスピスはそれを代表する建築物です。
貧しき者たちの間
大病棟
ずらりと並んだベッド
創立当時、時代は百年戦争のあとで、世の中が非常に乱れていた時期でした。ニコラ・ロランは、病気に苦しむ貧しい者たちを収容する場としてこのオスピスを立ち上げ、寄付金やブドウ畑の運営、ワインの生産を元手にしてこの施設を存続させることに成功します。では患者たちが収容されていたのはどのような場所だったのでしょうか。それが次にご案内する「貧しき者の間」です。
中庭から建物の中に入ると、広い回廊のような空間が開けています。これが大病棟。左右には白いシーツに紅いカバーの掛かったベッドが整然と並んでいます。ベッドは一つ一つに区切られ、同じように紅いカーテンが掛かっています。ベッド脇には小さなテーブルと椅子が一つずつ。中には看護婦である修道女の人形模型と一緒に看護の道具などが展示されているベッドもあり、当時の様子がしのばれます。この大病棟はその内装も素晴らしく、天井の梁やそこに描かれている模様まで、細部にわたって細かい仕事がされています。
病棟の奥にあるのはシャペル。ひっそりと静かなたたずまいです。
特別病棟、台所、そして調剤室
美術品のコレクションにも注目
オスピスにはこういった貧しい人たちばかりでなく、貴族やブルジョワ階級の人も入院していました。そういった人々が利用していた個室では、絵画やタピスリーなどの美術品も鑑賞できます。
次にオスピスの食事をまかなっていた台所を見学。ここにも修道女のマネキンが当時の様子を再現しています。患者のお世話から食事の支度まで忙しく働いていた修道女たちの生活が目に浮かぶようですよ。
病気といえばやはり薬の存在は欠かせません。オスピスには調剤室があり、ありとあらゆる薬草やオイルなどが調合されていました。棚には瓶に入った薬草や、様々な種類のオイルが陶器の壺に入って並んでいます。まだ現在のような医学技術が発達していなかった時代を考えると、できる限りの知識で治療に当たっていたことが分かります。
このオスピスは建築物としての価値だけでなく、5000を誇る貯蔵品を納める美術館としても価値があります。絵画、タピスリーなどのコレクションを集める部屋では、貴重な「最後の審判」が展示されているので、ぜひこちらも合わせて見学して下さい。
治療費の代わりに患者が作ったという模型
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屋根に使われる瓦の展示も
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パリからディジョンまで約1時間、そしてこのボーヌまで約30分と、一泊で回れるコースでもあります。とにかくその建築の美しさを堪能し、興味深い内部の様子をじっくりと見て回って下さい。パリだけでない、フランスの別の側面も見てみたい人にはブルゴーニュはおすすめの地方です。
以上、パリナビでした。