ついにパリに上陸!デザインウィーク

デザインの見本市、デザインウィークがパリで初開催。記念すべき第1回目!

こんにちは、パリナビです。9月から始まるフランスの新学期。バカンスから帰ってきたパリッ子たちが仕事を始めると同時に、さまざまなイベントがスタートします。まずはインテリア業界のパリコレともいわれいるメゾン・エ・オブジェ 2011(Maison&Objet)。インテリアの見本市で、世界中からライフスタイル分野に携わる人々が集まります。そしてメゾン・エ・オブジェに合わせて開催されたのがパリ・デザインウィーク(Paris design Week)。こちらは9月12日(月)から18日(日)まで行われたデザインの見本市です。すでにロンドン、ミラノ、東京、モスクワでは開催されていて、パリは今回が初めて。文化的イベント、そして買い付けや商談の場でもあり、プロフェッショナルから一般の人まで楽しみました。ショールーム、アートギャラリー、レストランなど約100カ所で、新作コレクションの発表、アトリエ訪問、討論などが行われました。

世界中から愛される「バカラ」

まず、ナビが訪れたのは「バカラ(Baccarat)」。バカラ本社が、高級住宅外のパリ16区に移転したのは2003年のこと。ここは歴史ある建物で、この館の主人であったマダムは趣向を凝らした数々のパーティーを開催。画家、作家、音楽家が集まるサロンとして提供していたそう。この館のある敷地内には本社オフィス、ショップ、レストラン、ギャラリー・ミュゼが併設されています。今年(2011年)はバカラを代表するシリーズ「アルクール」の170周年目ということで、新作が発表されました。

バカラのアイコン「アルクール」とは

1841年の発表以来バカラを代表し、世界中のセレブに愛用され続けているアルクール。その誕生のきっかけはナポレオン1世がバカラ村を訪れたとき。遠征に持ち歩くことができる丈夫さと、エレガントなグラスに魅了されたそう。それから1825年アルクール公爵家の婚礼のためにこのデザインの原型が作られた、とのこと。それ以来イギリスのヴィクトリア女王、ナポレオン三世などをはじめとする世界中の王室に愛用されています。
バカラのアイコン「アルクール」

バカラのアイコン「アルクール」

クリスタルのきらめきが美しい館内

クリスタルのきらめきが美しい館内

170周年を祝うためにつくられた、スタルク氏の新作

「アルクール」の誕生から2011年でちょうど170年。その記念すべき年を祝う第一弾として発表されたのがフィリップ・スタルク(Philippe Starck)の新作「ジュ・ドゥ・ダム(Jeu de Dames)」。フィリップ・スタルクは建築、インテリア、食器など、なまざまな分野のデザインを手がける有名なデザイナー。日本では金色の雲のようなオブジェ、浅草にあるアサヒビールのフラムドールを手がけことでも知られています。 ジュ・ドゥ・ダムとはチェスのようなフランスのゲームの名前。絹でつくられたチェッカー盤の上に、チェスの駒に見立てられた2色のグラスが置かれています。「女性は日常の中でミステリアスな人物を演じている。アルクールに姿を変えた駒はそれを象徴しているのです」と、単なる2色のグラスではないようです。

バカラの伝統を再解釈「ダークサイド・コレクション」

フランス語で「imparfait」とは不完全という意味。

フランス語で「imparfait」とは不完全という意味。

この新作は「ダークサイド」コレクションのひとつでもあります。2003年にバカラメゾンの内装を手掛けたスタルク。バカラの伝統を再解釈し、その透明な輝きの魅力をダークサイド(暗い場所)からとらえたのが「ダークサイド」コレクション。そのコレクションのひとつ、「imparfait(アンパルフェ)」は「不完全」という意味。この名前がつけられたグラスは黒い台が付いた6客のうち、1客だけ赤い台の上に乗っています。それはなぜ?バカラ社のグラスは高い品質管理の下、その製造過程を経たパルフェ(完全)な作品はわずかだそう。黒い台に乗っている5客は「アンパルフェ」であり、赤い台に乗っている1客だけが「パルフェ」なのです。実際に見るとこの違いはほとんど分かりません。この2つと取り違えてしまわないのかと思ってしまいますが、それは心配ご無用。「アンパルフェ」は「imparfait」、「パルフェ」には「parfait」の文字とバカラグラスの完全体であることを示すシリアルナンバーが刻まれているとのこと。 さらに、「アンパルフェ」には「B」というバカラ社を示すロゴのみしか入っていませんが、「パルフェ」には「Baccarat」という正式名称が刻印されています。フィリップ・スタルクとバカラ社の職人の技術、デザイン、そして遊び心溢れる作品です。

170周年記念グラス「パレ・ロワイヤル」

170周年記念グラスの「パレ・ロワイヤル」。グラス中央にはバカラ創設の認可したという、フランス国王・ルイ15世と、その王妃・マリーが描かれています。18世紀のフランス王室を思わせる、華やかなデザインです。
歴史あるバカラのクリスタルの世界を存分に堪能できるギャラリーです。

生まれ変わった老舗ホテル・ブラッスリー「トゥーミュー(Thoumieux)」

次に訪れたのは、エッフェル塔がよく見えるパリ7区のサン・ドミニック通り。1923年に誕生した老舗ホテル・ブラッスリー「トゥーミュー(Thoumieux)」です。ホテル、レストランの事業家のティエリー・コスト(Thierry Cost)氏と、高級ホテル・クリヨンのシェフを務めたジャン・フランソワ・ピエージュ(Jean-François Piège)氏。この2人が共同経営者として買い取り、改装したのが「トゥーミュー」。1階がブラッスリー、2階がレストラン、3階がホテルとなっています。2009年にリニューアルオープンしたレストランは、いきなりミシュランの二つ星をとったことでも注目を集めています。内装は、建築家、デザイナーのインディア・マダヴィ(India Madhavi)氏が担当しています。

オーダーメイドの注文を手づくりで製造する「ジャルス(JARS)」

レストランの食器、ホテルのオブジェを作ったのはジャルス(JARS)。1857年にローヌ・アルプ地方のドローム県で生まれ、家族経営のアトリエから始まったセラミックのメゾンです。1900年の万博博覧会ではグラン・プリを受賞。素材、色、形は全てオーダーメイド。手づくりで製造を行っています。職人の手から生まれる優しく自然な色合い、手触り、温かみのある形は高い評価を得ています。ジャン・フランソワ・ピエージュ氏の要望により作られたデザート用のスプーンは、口当たりを邪魔しないようになめらかな仕上がり。フィリップ・スタルク氏がデザインを担当したお皿はホテル・ロワイヤル・モンソーのレストラン、丸みのあるかわいらしいポットはマリアージュ・フレールのために作られものです。
トゥーミューのスプーンはつるつる!

トゥーミューのスプーンはつるつる!

フィリップ・スタルク氏と共同で作ったお皿

フィリップ・スタルク氏と共同で作ったお皿

マリアージュ・フレールのオーダーメイドのポット

マリアージュ・フレールのオーダーメイドのポット

トゥーミューのホテル内のオブジェ。何ともやさしい色あいは、職人の手と自然の力によるもの。 トゥーミューのホテル内のオブジェ。何ともやさしい色あいは、職人の手と自然の力によるもの。 トゥーミューのホテル内のオブジェ。何ともやさしい色あいは、職人の手と自然の力によるもの。

トゥーミューのホテル内のオブジェ。何ともやさしい色あいは、職人の手と自然の力によるもの。

自宅に友人を招くようなレストラン

「イメージは都市の中にある田舎のホテル」とピエージュ氏。マダヴィ氏は「パリの家。熱い気持ちと、温かみがあり、思いやりにあふれる家族のペンション。過ごしていて時間を忘れるような空間です」と。家を進化させたようなホテルのようです。その15部屋は"生活の場所" がコンセプト。「デザイン的ではない。このホテルのジャンルはどのカテゴリーにも属しません」。室内にはipodなどハイテク機器を備えて個性的にしながらも、パリらしくシックに、洗練されている部屋を目指したそう。
レストランの入口にあるフロント

レストランの入口にあるフロント

レストランはくつろぎの雰囲気

レストランはくつろぎの雰囲気

レストランはピエージュ氏がお客さんを友人のように迎えることができるアパルトマン。「わざとらしさはもう時代遅れです。シンプルさと大胆さ。この場所を魅力的にしたかった」と挑戦的でもある内装だそう。この結果、ミシュランの星を獲得したのですからすごいですよね!
お客さんから見えるオープンキッチン

お客さんから見えるオープンキッチン

シェフの家にいるような感覚で

シェフの家にいるような感覚で

『Dessine-moi le Japon 』わたしに日本を描いてください

展示場がパリのあちこちにあるので、移動がひと苦労。その会場のひとつとなっているのが、パリ13区のセーヌ川沿いにあるモード・デザイン都市(Cite de la Mode et du Design) 。パリにある6つの主要駅のひとつ、オステルリッツ駅はリモージュ、ボルドーへの玄関口です。この周辺は数年前から再開発工事がすすんでいて、倉庫を利用してつくられたのがこのモード・デザイン都市。この中にはフランス国立モード研究所(Institut francais de la mode)のほか、ショップ、イベントスペース、レストランが入り、モードやデザインの展示会やイベントが行われます。 
そのスペースの一角で展示されたのが『Dessine-moi le Japon わたしに日本を描いてください』。東日本大震災の被災者の方々を支援するための展示会です。クリエイティブ・ディレクターのブリジット・フィトゥシ(Brigitte Fitoussi)さんの呼びかけで、約100人のクリエイターがそれぞれに日本を表現。この作品は東京で10月末に15日間、そのあと2012年のメゾン・オブジェで展示され、地震の義援金のためのオークションにかけられるそう。ブリジットさんのメッセージには「日本に対してどのように敬意を払えばいいのでしょうか、どのように支援と友情を表せばいいのでしょうか」。と書かれていました。
そして行動だけではなくメッセージでもその想いを伝えるために「あなたたちのことを忘れません。わたしたちはあなたたちのことが大好きです、というためにかわいいという言葉を使いたい。」また、「赤色は日が昇る国のシンボル。ここで展示されている数々のデッサンの特徴。人生、そして波によってもたらされた記憶。生き残り、これから生き残っていくために戦わなければいけない人々の希望」とありました。いくつかの作品を紹介します。

日本へのメッセージ

ピエール・エルメ(Pierre Hermé)氏

ピエール・エルメ(Pierre Hermé)氏

フィリップ・ディメオ(Philippe Di Méo)氏。「パリの大仏から日本に祈りを」

フィリップ・ディメオ(Philippe Di Méo)氏。「パリの大仏から日本に祈りを」

ジャン・フランソワ・ピエージュ(Jean-François Piège)氏

ジャン・フランソワ・ピエージュ(Jean-François Piège)氏

バネッサ・ブリューノ(vanessa bruno)氏

バネッサ・ブリューノ(vanessa bruno)氏


いかがでしたか?日常生活から遠いような分野ですが、実は身近にあるデザイン。デザインを通じて、新しい発見、人の出会いが待っているデザイン・ウィーク。今から来年が楽しみですね!以上、パリナビでした。

(※ギャラリー・ミュゼ・バカラでは、2012年1月28日まで「LHARCOURT  TOUJOURS」というアルクールの展示会が開催されます。ぜひ足を運んでみてください。)
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上記の記事は取材時点の情報を元に作成しています。スポット(お店)の都合や現地事情により、現在とは記事の内容が異なる可能性がありますので、ご了承ください。

記事登録日:2011-09-27

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